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マスデバリア属専用の温室見学記

20日の月曜日に、数年前に、マスデバリア専用の温室をレンガで造ったという人のところに行ってきた。

前庭が南向き…ということは、バックガーデンは北向きっていうことだ。その北向きの庭の一番北の部分に両手を伸ばせば届くくらいの幅の温室があった。すぐ右側にはお隣さんとの境の生垣。ほとんど1メートル半くらいの高さなのだが、この部分だけはぐっと高く、2メートル50以上の高さがありそうだ。この生垣の持ち主はこの人、マイクなので、高さの調節は自由自在。北側が接しているお宅には、大きな木が生えていて、その木をパッションフラワー(Passiflora)がおおっている。このパッションフラワーはマイク宅のもの。手前にも、もっこり潅木があって、日陰を意識している(ような?)位置にある。

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こんな感じだ。ドアの向こう側で雨水をため、そのまま温室内に取り込めるようにパイプが配してある。

あかりとりは屋根。半透明のプラスティック製の板を使って、ここからあかりをとる。屋根は前方に傾斜していて、南からの光が入ってくるようになっている。

その上には滑車を利用した遮光用の布がある。日光が強いときにはこれを降ろすことになるのだが、傾斜した屋根との間にはすき間ができるように針金が配してある。そのほうが温室内が涼しくなるとのこと。

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Masdevallia leptoura

先週のラン協会月例会で、マスデバリア1株購入。Masdevallia leptoura という。エクアドルからペルー北部にかけて自生しているらしい。

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ところが、 この写真を見た人に、Masd.polysticta に似ていると言われてしまった。 Masd.pachyura に似ているという人もいる。では、一体どこが違うのだろうかと、本で調べてみた。( “Masdevallias—Gems of the orchid world” Mary E.Gerristsen & Ron Parsons共著)

この本には Masd.polysticta の写真が載っている。それを見ると、セパルの内側に毛が生えている。leptoura には生えていないので、その辺が違うのかなと思う。

Masd.pachyura については、著者は触れていなかった。

だが、別のランの名前があがっていた。 Masd.caloptera である。栽培されているMasdevallia leptoura の中に、間違ったラベルがついているものが多いそうだ。何と間違えるかと言うと、この Masd.caloptera だ。いかに間違えることが多いかについて、例として、アメリカ・ラン協会(AOC)受賞ラン (CCM/AOC)にまであると書かれていた。だが、実はこの2種の区別はそう難しくないそうだ。

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この4種のマスデバリアは、全て、アマンダ亜属(subgenus Amanda) に属していて、どれも花茎から複数の花が咲く。一応、買ったマスデとほかの3種の区別がつくかもしれないので、横顔も・・・。

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英国ラン協会(Orchid Society of Great Britain)8月例会

今日のトークは、去年キュー植物園を退職したばかりのフィリップ・クリブ博士による、学術調査旅行での体験談だった。博士は世界的なランの権威で、キュー植物園で30数年をすごし、ラン標本の責任者として、それまで放置されていたラン標本を分類整理し、名前をつけ、多くの学術調査に参加、それに基づいた多くの著作がある。

初めての学術調査は1976年。アフリカでの3ヶ月。「そこのランはもう既に調べ尽くされているから、行っても無駄だよ」と言われた、その地域に入った初日から、複数の新種のランを発見したという話から始まった。その後再びアフリカ(イエメン、エチオピア、カメルーンなど)、ニューギニア、ニューブリテン島、ソロモン諸島、ボルネオ、オーストラリア、ブータン、中国、ベトナムなどを訪れたそうだ。

わたしにとって興味深かったのは、珍しいランの写真。そしてそれらの調査旅行が危険と紙一重だったという事実。そのいくつかの例。

たとえば、初回のアフリカ(タンザニア)行では、車の外に出たとたんにライオンに出くわした話。沼地に咲くランを見に、深さ3-40センチの水の中を歩いて行ったが、そこをヘビが、広げた自分の両足の真ん中を泳いでいったという話。 ニューギニアでだったと思うが、原住民に重い槍で襲われそうになったという話。襲われていれば死ぬということだ。また木や山に登らなければならないが、それが危険と紙一重だという例として、過去にキューで博士号の勉強をしていた人が木から落ちて帰らぬ人となったという話。ボルネオでは、荷物を全部パックしてリュックに入れた同行者が、そのあと、そのリュックの一番上に10センチ以上あるサソリが入っているのに気づいた話。びしょぬれになった皮の登山靴を干して寝たら、翌朝、靴底が床に落ちている。皮の部分は地元の犬に食べられてしまったという話。オーストラリアでは干していた下着を食べられてしまったという話。ランを見に木に登ったら、運悪くハチの巣につっこみ、襲われて、ハチから逃れるために下の川に飛び込んだ人の話。この人は顔がかぼちゃみたいに膨れ上がったという。

あまりにも日常生活からかけ離れているので、それがとてもおもしろく興味深かった。

ニューギニアでだったと思うが、博士が珍しいランを見つけ歓声をあげた。”Wow!” 「わぁお!」。それから、「わぁお!わぁお!」ダンスが始まったという話。これは博士がランを見つけて歓声を上げるたびに、同行している原住民が「わぁお!」「わぁお!」と言ってひとしきり踊るのだそうだ。

そうそう、これも確かニューギニアでだったと思うのだが、ある部落では、ご先祖様をミイラにして保存、必要に応じて出してくるのだという。クリブ博士も、「わたしの曽祖父を紹介します」と、真っ黒のミイラを出してこられたことがあるそうな。その写真を見せてくれたが、これもびっくりであった。

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ほかにおもしろかったのはランの利用法。トルコでは地下塊をアイスクリームに入れると読んだことがあるが、ブータンでは、シンビジウムの花をカレーに入れるのだそうだ。苦味が出ていいらしい。タンザニアでは、Habenaria cornutaのだったかな?地下塊を食用にするのだそうだ。 また中国のグァンシ南部では、デンドロビウムを薬として利用するのだそうだ。

こういう話をとてもおもしろく聞くことができた。ただ、地理に疎いわたしとしては、中国のグァンシ南部なんて言われてもどの辺のことか全くわからない。地図で調べてみよう。

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マスデバリアを1鉢買った。

RHS ラン展

RHSラン展が、3月16日(金曜日)の午後6時半より9時まで内覧会、そして昨日、今日と、両日午前10時から午後5時まで開催された。わたしは内覧会、そして土曜日と1日半参加。ペルーでお世話になったペルーフローラに注文しておいた5属7種のほかに、2種購入。これがうまく育てられれば、来年以降はもっと自信をもって買うことができるようになるかなと期待している。ほかに、フラスコ苗の小さいものも一つ実験用に購入。これも楽しみだ。

購入したランは以下の通り。

Cattleya maxima: 本当はRuiz & Pavónが発見したというラン。Sobralia に分類したようだが、発表には至らず、その50余年後に、標本はLindleyの手に渡り、LindleyによってCattleya maximaと発表されたのだそうだ。 もしもRuiz & Pavónが発表していたとしたら、今頃カトレヤ属ではない別の属名ができていたことだろう。

Masdevallia uniflora: Ruiz & Pavónがペルーのワサワシで発見。1798年に発表される。マスデバリアの基準種。

Masdevallia veitchiana: ペルー・マチュピチュ産のマスデバリア。

Stelis purpurea: Ruiz & Pavónが1798年に発表したHumboldtia purpureaが、Willdenowによって分類され直したもの。

Stelis sp.

Restrepia antennifera

Restrepia elegans

Paphiopedium hisutissimum

Trichopilia fragrans